能『船弁慶』から発想された、ドラマティックな詩的映像である。オリジナルの二人の主人公は、大海原の逃避行を続ける義経に置き去りにされた静御前と、海上にて義経に襲いかかる平知盛の亡霊(義経により壇ノ浦の戦いに破れ、西海に果てた平家一門の大将)。
Labrysとは、対称形の両刀斧を意味している。
能のテクストにおいては、しばしば自然の状態や描写が登場人物の心理状態や状況をそのまま暗示する。« Labrys » では、義経という同一の相手を中心とするこの二人の登場人物の対照的な関係性が、同じ状景、心象風景の中にていつしか同一化するかに、愛憎/生死といった表裏の反転を繰り返す様相を描いている。